家庭学習で力をつけた不登校児の事例|自主学習の効果

学校に行けない日々が続くと、「勉強が遅れてしまうのではないか」「将来が心配」といった不安を抱える保護者の方も多いのではないでしょうか。しかし、家庭での学習環境を整えることで、お子さんが着実に力をつけていくことは十分に可能です。今回は、実際に家庭学習で学力を向上させた不登校のお子さんの事例をご紹介しながら、自宅学習の効果について考えてみたいと思います。

目次

田中さん(仮名)中学2年生の事例

不登校になったきっかけ

田中さんは中学1年生の秋頃から学校に行くことが困難になりました。クラスでの人間関係に悩み、朝になると体調不良を訴えるようになったのです。最初は「少し休めば大丈夫」と思っていたご両親でしたが、状況は改善せず、結果的に1年以上の長期欠席となりました。

家庭学習への取り組み開始

不登校から3か月ほど経った頃、田中さんのお母さんは「このままでは勉強が心配」と感じ、無理をしない範囲で家庭学習を始めることを提案しました。最初は本人も「どうせできない」と消極的でしたが、お母さんの「一緒にやってみよう」という言葉に背中を押され、小さな一歩を踏み出しました。

自主学習の工夫と成果

1. 本人のペースを最優先に

田中さんの家庭では、決して無理をしないことを大切にしました。調子の良い日は2時間、体調の優れない日は30分だけでも良いという柔軟なスタイルを採用。「今日はこれだけできた」という小さな達成感を積み重ねていきました。

2. 興味のある分野から始める

もともと歴史が好きだった田中さんは、歴史の学習から再スタート。好きな戦国武将について調べ学習をしながら、自然と国語の読解力や社会科の知識が身についていきました。

3. オンライン教材の活用

学校の授業に追いつくため、オンラインの学習教材を導入。自分のペースで進められることや、分からない部分を何度でも復習できることが、田中さんにとって大きなメリットとなりました。

4. 学習記録をつける

毎日の学習内容を簡単な日記形式で記録。「今日は数学の方程式が解けるようになった」「英単語を10個覚えた」といった小さな成長を可視化することで、自信につながっていきました。

1年後の変化と成長

家庭学習を続けて1年が経った頃、田中さんには大きな変化が見られました。

学力面での向上

定期的に受けていた模擬試験の結果が、不登校前のレベルを上回るようになりました。特に、自分のペースで深く学習できた歴史分野では、同年代の平均を大きく上回る成果を示しました。数学や英語も、基礎からじっくり取り組んだことで、着実に力をつけていったのです。

自主性の育成

最も大きな変化は、田中さんが自ら学習計画を立てるようになったことでした。「今週はこの単元を終わらせたい」「苦手な英語をもう少し頑張ってみよう」といった前向きな発言が増え、学習に対する主体性が育まれていきました。

自信の回復

学力向上とともに、田中さんの自信も少しずつ回復していきました。「自分にもできることがある」「頑張れば結果がついてくる」という実感を得ることで、将来への希望も見えてきたのです。

山田さん(仮名)小学5年生の事例

個別対応の重要性

山田さんの場合は、集団での学習に不安を感じるタイプでした。ご両親は、一対一での丁寧な指導を心がけ、お子さんのペースに合わせた学習環境を整えました。

創造的な学習方法

山田さんは絵を描くことが得意だったため、学習内容を絵や図で表現する方法を取り入れました。理科の実験結果を絵日記にまとめたり、算数の文章題を漫画形式で解いたりと、創造的なアプローチが功を奏しました。

自宅学習効果を高めるポイント

これらの事例から見えてくる、不登校のお子さんの学力向上に効果的なポイントをまとめてみましょう。

1. 無理のないペース設定

お子さんの体調や気持ちの波に合わせて、柔軟に学習時間を調整することが大切です。「毎日必ず○時間」といった厳格なルールよりも、「今日できる範囲で」という優しいアプローチが効果的です。

2. 興味・関心を出発点に

好きなことや得意なことから学習を始めることで、勉強への抵抗感を和らげることができます。そこから徐々に他の教科へと広げていくことで、総合的な学力向上につながります。

3. 小さな成功体験の積み重ね

「できた」「分かった」という体験を大切にし、それを認めて褒めることが、お子さんの自信と学習意欲の向上につながります。

4. 保護者の寄り添い

一人で頑張らせるのではなく、保護者の方が適切にサポートすることが重要です。ただし、過度な介入は避け、お子さんの自主性を尊重することも忘れずに。

不登校でも学力向上は可能

これまでご紹介した事例が示すように、学校に通えない期間があっても、適切な家庭学習により学力を向上させることは十分に可能です。大切なのは、お子さん一人ひとりの特性やペースを理解し、それに合わせた学習環境を整えることです。

不登校という状況は確かに大変ですが、同時にお子さんの個性や可能性を発見する貴重な機会でもあります。焦らず、お子さんのペースに寄り添いながら、一歩ずつ前進していくことで、きっと道は開けるはずです。

家庭学習での成功体験は、お子さんの自信回復だけでなく、将来への希望にもつながります。「学校に行けない」ことを「学習できない」理由にする必要はありません。お子さんの可能性を信じて、温かく見守っていきましょう。

投稿者

堀内 孝一

1997年代前半に全国の高校中退者が12万人という状況を知り、その時代では唯一無二の教育である全日型通信としてリスタート教育を掲げていたクラーク記念国際高等学校に1997年に入職。西日本地区を中心にリスタート教育を発信し続ける中、2023年に小中学生の不登校34万人以上という状況の中、2024年に「一般社団法人こども教育支援機構」がフリースクール:クラーク国際中等部を設立。初代校長に就任。
居場所作りのスリースクールにプラスして「将来先取り教育」を実行している。

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