在籍学校への復帰だけが正解ではない|不登校の多様な学びの形を理解する

お子さんが学校に行けなくなったとき、多くの保護者の方が「なんとか今の学校に戻さなければ」と、復帰に焦りを感じることでしょう。
でも、少し立ち止まって考えてみてください。「人生の正解は、その一本道だけ」と言われて、その道に不安になっている人が、前向きに動けるものでしょうか。「他の選択肢とともに示される一つの道」、と言わず「本当に唯一の正解」として良いのでしょうか。
「学校復帰」へのプレッシャーから自由になる

不登校になると、周囲から「早く学校に戻れるといいね」という言葉をかけられることが多くなります。善意からの言葉だとわかっていても、保護者の方も、そしてお子さん自身も、そのプレッシャーに苦しむことがあります。
大切なこと(現在地から見るゴール)は、お子さんが「学ぶこと」をやめてしまわないこと。そして、その子らしく成長していける環境を見つけることではありませんか。そう考えると、必ずしも現在の学校という形でなくてもいい、ということになりませんか。
学校以外の選択肢がわからない、民間のフリースクールはよくわからないしお金もかかるし暗そうなイメージがある、できることなら今のまま変わらず同じ学校に通い続けてくれた方が助かる。そんな風に思われる方もいらっしゃいますし、その状態を否定することはありません。確かに、「今のまま」の方が変化が少なく負担も少ないように思います。
一方、だからと言って、在籍している学校以外選択肢は他にはない、という伝え方で「前向きに学校へ登校できるのか」「ゴールは何か」という点に立ち戻ると、最終的には、お子さんが納得・選択的に「学習する場に合流する」のが一番望ましいのではないでしょうか。

広がる「不登校生の学校復帰以外の選択肢」

現在、不登校の子どもたちには、学校以外にも様々な学びの場が用意されています。
教育支援センター(適応指導教室)
各自治体が運営する公的な施設で、学校復帰を目指すだけでなく、子どもの社会的自立を支援する場所です。少人数での学習や、様々な体験活動を通じて、自分のペースで過ごすことができます。学校の出席扱いになることもあり、保護者の経済的負担も少ないのが特徴です。
フリースクール
民間が運営する教育施設で、それぞれが独自の教育理念を持っています。学習スタイルは多様で、個別学習を重視するところもあれば、体験活動を中心にするところもあります。一定の条件を満たせば学校の出席扱いになる場合もあります。
オンライン学習・通信制高校
ICTの発達により、自宅にいながら質の高い教育を受けられる環境が整ってきました。オンライン教材やタブレット学習、双方向型の授業など、選択肢は豊富です。中学生ならオンライン学習支援、高校進学を考えるなら通信制高校という選択もあります。
ホームエデュケーション(家庭学習)
保護者が中心となって家庭で学習を進める形です。お子さんの興味関心に沿った学びを深めることができ、生活リズムを整えながら無理なく進められます。地域の図書館や博物館、習い事なども活用しながら、柔軟な学びを組み立てられます。

復帰ではなく「個別最適化」こそが鍵

教育の世界では今、「個別最適な学び」という考え方が注目されています。すべての子どもに同じ方法が合うわけではありません。一人ひとりの特性、興味関心、学習ペース、心身の状態に合わせた「わくわく」・学び方を選ぶことが、本当の意味での教育です。
Studyを日本語では「勉強する」(つとめてつよくする)と訳しますが、本来は「熱中する」という意味を持っているそうです。つまり、わくわくすることがとても大切なのです。
お子さんにとっての「わくわくする最適な学び方」はどのようなものなのでしょうか。
- 静かな環境で一人で集中したいタイプ?
- 少人数でじっくり関わりたいタイプ?
- 体験を通して学ぶのが得意?
- 自分のペースで深く探究したい?
- みんなと意見を交換しながらやりたいタイプ?
- 優しい友達に囲まれていると安心できるタイプ?
お子さんをよく観察し、対話を重ねながら、まずは、その子に合った学ぶ環境や学び方を一緒に探していきましょう。

「多様な学び」を選ぶときのポイント

1. 焦らず、お子さんの状態を最優先に
心身の回復が最優先です。まずは安心できる環境で休息をとり、エネルギーを充電することが大切です。
2. 情報収集をていねいに
自治体の教育相談窓口、スクールカウンセラー、不登校の親の会など、様々な場所で情報を集めましょう。実際に施設を見学したり、体験に参加したりすることもおすすめです。
3. お子さんの意思を尊重する
押しつけではなく、お子さん自身が「やってみたい」と思える選択肢を見つけることが成功の鍵です。
4. 柔軟に変更できることを忘れずに
一度選んだ道が合わなければ、変更することもできます。試行錯誤しながら、その時々で最適な形を選んでいけばいいのです。

大切なのは「今」と「これから」

学校に行けなかった期間を「空白の時間」だと考える必要はありません。その時間に、お子さんは自分と向き合い、家族との絆を深め、自分なりの興味や関心を育てているかもしれません。「今輝けば、未来も過去も変わる。」ここを巣立った生徒が残した言葉です。
不登校という経験を通じて、自分の特性や大切にしたいことに気づき、自分らしい生き方を見つけていく子どもたちもたくさんいます。過去の事実は変わらずとも、今が輝くことで未来が明るいものになり、自信を取り戻すと、「過去の事実」の取り扱い方が心の中で変わっていく、ということなのだと思います。

保護者の方へ
「学校復帰が唯一の正解」という思い込みを手放すことで、見えてくる景色があります。多様な学びの選択肢があることを知り、お子さんに合った道を一緒に探していく。その過程そのものが、お子さんの成長を支える大切な時間になります。
お子さんの「今」を受け止め、「これから」を信じる。その気持ちが、きっとお子さんの力になるはずです。
あなたは一人ではありません。同じように悩み、考え、子どもと向き合っている保護者の方がたくさんいます。そして、子どもたちを支えようとする様々な人や場所があります。
焦らず、でも前を向いて、お子さんにとっての「多様な学び」を見つけていきましょう。

