不登校が夫婦関係へ及ぼす影響と対処法|パートナーとの連携

お子さんの不登校に直面したとき、多くのご家庭で起こるのが夫婦関係の変化です。「なぜうちの子が」「私たちの育て方が間違っていたのか」といった思いから、お互いを責めてしまったり、対応方針で意見が分かれてしまったりすることは珍しいことではありません。

しかし、このような困難な時期だからこそ、夫婦が手を取り合って歩んでいくことが、お子さんにとっても家族全体にとっても何より大切になります。今回は、不登校が夫婦関係に与える影響を理解し、パートナーとの協力関係を築くための具体的な方法についてお話しします。

目次

不登校が夫婦関係に与える影響

価値観や対応方針の違いが表面化する

お子さんの不登校という予期しない状況に直面すると、普段は気にならなかった夫婦間の価値観の違いが鮮明に現れることがあります。「厳しく指導すべき」と考える方と「まずは子どもの気持ちを受け入れるべき」と考える方、「学校に行かせることを最優先にしたい」方と「子どもの心の安定を重視したい」方など、アプローチの違いが夫婦の間に溝を作ってしまうことがあります。

精神的な負担の偏り

多くの場合、お子さんと過ごす時間の長い方(主に母親)により大きな精神的負担がかかりがちです。日中の子どもの様子を見守り、学校との連絡を取り、将来への不安を一人で抱え込んでしまうケースが少なくありません。一方で、仕事で家を空けることの多いパートナーは、状況を十分に理解できずに的外れなアドバイスをしてしまい、結果的に関係がギクシャクしてしまうこともあります。

責任の押し付け合い

「あなたが甘やかしすぎたから」「もっと早く気づくべきだった」といった責任の押し付け合いが生じることもあります。このような状況では、本来一緒に問題に向き合うべき夫婦が対立してしまい、お子さんにとってもつらい環境を作り出してしまう可能性があります。

パートナーとの連携を深める方法

定期的な話し合いの時間を作る

不登校への対応について、夫婦で定期的に話し合う時間を意識的に設けることが大切です。お子さんのいないところで、お互いの考えや感情を率直に共有しましょう。「今週の様子はどうだった?」「来週はどんなふうに過ごそうか?」といった具体的な話から始めて、長期的な方針についても少しずつ話し合っていくことをおすすめします。

この時大切なのは、相手の意見を否定せずにまず聞くということです。「そんな考え方もあるんだね」「あなたはそう感じているんだね」といった受け入れの姿勢を示すことで、建設的な対話が生まれやすくなります。

役割分担を明確にする

夫婦それぞれの得意分野や生活スタイルに合わせて、役割分担を明確にすることも効果的です。例えば、「平日の日中の対応は主に母親が、週末の外出や活動は父親が担当する」「学校との連絡は母親が、専門機関との相談は父親が」といった具合に、お互いの負担が偏らないような分担を考えてみましょう。

ただし、役割分担をしても、お互いの状況や気持ちを共有することは欠かせません。「今日はこんなことがあった」「こんなふうに感じている」といった日常的なコミュニケーションを大切にしましょう。

お子さんの前では統一した対応を心がける

夫婦間で意見が分かれていても、お子さんの前では可能な限り統一した対応を取ることが重要です。お子さんは大人が思っている以上に敏感で、両親の関係性の変化や対立を察知してしまいます。「お父さんとお母さんが自分のことで喧嘩している」と感じさせてしまうと、お子さんの心の負担がさらに重くなってしまう可能性があります。

意見の相違がある場合は、お子さんのいないところで十分に話し合い、基本的な方針だけでも合意を形成してから対応するようにしましょう。

夫婦関係を良好に保つための心構え

完璧を求めすぎない

不登校の状況では、「正解」が見えにくく、試行錯誤の連続になることが多いものです。そんな中で、お互いに完璧を求めすぎると、疲弊してしまいます。「今日はうまくいかなかったけれど、明日また違うアプローチを試してみよう」といった柔軟な姿勢を持つことが大切です。

感謝の気持ちを言葉にする

困難な状況だからこそ、パートナーへの感謝の気持ちを意識的に言葉にすることが重要です。「いつも子どものことを考えてくれてありがとう」「仕事で疲れているのに話を聞いてくれてありがとう」といった小さな感謝でも、お互いの心の支えになります。

夫婦だけの時間も大切にする

お子さんのことで頭がいっぱいになりがちですが、夫婦としての時間も意識的に作ることが大切です。短時間でも二人だけでお茶を飲んだり、散歩をしたりする時間を持つことで、パートナーシップを維持することができます。

専門家の力も活用しよう

夫婦だけで抱え込まず、スクールカウンセラーや臨床心理士、家族療法の専門家などの力を借りることも検討してみてください。第三者の客観的な視点やアドバイスが、夫婦関係の改善にも役立つことがあります。

また、同じような経験を持つ親の会や支援グループに参加することで、「自分たちだけではない」という安心感を得られるとともに、他の夫婦がどのように協力し合っているかを学ぶことができます。

まとめ

お子さんの不登校は、確かに夫婦関係に影響を与える出来事です。しかし、この困難を二人で乗り越えることで、より深い絆で結ばれた夫婦関係を築くことも可能です。

大切なのは、お互いを責めるのではなく、同じ目標に向かって歩むパートナーとして支え合うことです。完璧な対応を求めすぎず、小さな歩みを積み重ねながら、お子さんにとって安心できる家庭環境を作っていきましょう。

困ったときは一人で抱え込まず、パートナーと話し合い、必要に応じて専門家の力も借りながら、家族全体で前に進んでいくことが何より大切です。あなたとパートナー、そしてお子さんの笑顔のために、今日から少しずつでも夫婦の連携を深めていきませんか。

投稿者

堀内 孝一

1997年代前半に全国の高校中退者が12万人という状況を知り、その時代では唯一無二の教育である全日型通信としてリスタート教育を掲げていたクラーク記念国際高等学校に1997年に入職。西日本地区を中心にリスタート教育を発信し続ける中、2023年に小中学生の不登校34万人以上という状況の中、2024年に「一般社団法人こども教育支援機構」がフリースクール:クラーク国際中等部を設立。初代校長に就任。
居場所作りのスリースクールにプラスして「将来先取り教育」を実行している。

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