不登校でも将来は明るい|成功事例と可能性を知る

お子さんが学校に行けない日々が続くと、保護者の方は「この子の将来はどうなるのだろう」と不安になることもあるでしょう。

しかし、不登校を経験したからといって、将来の可能性が閉ざされるわけではありません。むしろ、不登校という同世代の中での少数派な経験を通じて自分自身と向き合い、独自の道を切り開いていった方々が数多くいらっしゃいます

目次

不登校経験者の輝かしい成功例

不登校を経験しながらも、さまざまな分野で活躍している方々がいます。

クリエイティブな分野での活躍

ある有名な映画監督は、中学時代に不登校を経験しました。学校に行けない時間を使って、映画やアニメに没頭し、独自の感性を磨いたといいます。今では国際的に評価される作品を生み出し続けています。

IT・テクノロジー分野での成功

プログラマーやエンジニアとして活躍する方の中にも、不登校経験者は少なくありません。学校に通わない時間を利用して、パソコンに熱中し、独学でプログラミングを習得。現在は大手IT企業で活躍したり、自らスタートアップ企業を立ち上げたりしています。

起業家としての道

不登校時代に感じた「既存の枠組みに合わない」という経験が、新しいビジネスを生み出す原動力になったという起業家もいます。人と違う視点を持つことが、イノベーションにつながっているのです。

保育、教員、不登校支援、塾運営など対人支援の道に進む人も

思春期に、周囲に暖かい良質なサポートをたくさんしてもらえた、という経験値によって、将来自分も誰かの役に立ちたい、というアイデンティティを確立させる方が少なくありません。孤独な気持ちに寄り添ってもらい、心が解けた経験を持つ人ほど、絶妙な距離感をとるのが上手だったりします。

自治体職員、地域行政・議員の道

「学校に行っていたことがある」「学校に行っていない時期もある」、という経験・複眼的な視点によって、子どもの教育や自治体の取り組みの課題解決に使命感を感じる人もいます

不登校で学校に行っていない時期は、不安感・悲壮感・後悔・罪悪感など壮絶な心の揉まれ方をしていますが、過去の経験を自分の糧として捉えられるようになることで、生き方や生きがいを見つけていく人がいます。

多様化する進路の選択肢

現代社会では、学校教育以外の学びの場や進路が驚くほど多様化しています。

フリースクール・オルタナティブスクール

全国に約470か所以上あるフリースクールでは、一人ひとりのペースに合わせた学びが可能です。ここから高校や大学に進学し、自分の興味を深めていく生徒も多くいます。

通信制高校・定時制高校

自分のペースで学習できる通信制高校は、近年注目を集めています。レポート提出やスクーリングを通じて高校卒業資格を取得でき、その後の大学進学も可能です。定時制高校も、働きながら学べる柔軟な選択肢として再評価されています。

高卒認定試験からの大学進学

高卒認定試験(旧大検)に合格すれば、高校を卒業していなくても大学受験資格が得られます。実際に、この道を通って難関大学に合格し、研究者や専門職として活躍している方も多くいらっしゃいます

専門学校・職業訓練

興味のある分野に特化して学べる専門学校や、職業訓練校という選択肢もあります。美容、デザイン、調理、IT、福祉など、実践的なスキルを身につけ、即戦力として社会で活躍できる道です。

「今」は将来への大切な準備期間

不登校の期間は、決して無駄な時間ではありません。むしろ、お子さんが自分自身と向き合い、本当に大切なものを見つける貴重な時間になり得ます。

この時期に大切なのは、以下のような視点です。

好きなこと、興味のあることを大切に

学校に行けなくても、何か夢中になれることがあれば、それを応援してあげてください。読書、ゲーム、絵を描くこと、動物の世話、料理など、どんなことでも構いません。その興味が将来の進路につながることもあります。

小さな成功体験を積み重ねる

「今日は〇〇ができた」という小さな達成感を大切にしましょう。それが自信となり、次のステップへの原動力になります。

自分は大切な存在なんだ、と気づける出逢い

傷つきの深さによって回復には時間がかかることもあります。一番近くで寄り添う保護者の方が焦ってしまうお気持ちもよくわかります。至近距離を見つめると遠くの視点のピントが合わずぼやけてしまうように、お子さんとの日常の距離が近すぎて、将来像や可能性の解像度が下がってしまうことがあるのだと思います。

お子さん自身のペースを尊重するためには、「この子の良いところを一緒に見つけてくれる」保護者の味方、そして、「あなたは大切な存在なんだよ」ということを程よい距離感で伝えてくれる、「重要な他者」と出逢うことが、結果的に良い方向につながります。

将来に向けてできるサポート

保護者の方ができるサポートとして、次のようなことがあります。

情報収集と選択肢の提示

進路の選択肢は想像以上に広がっています。お子さんの興味や状況に合わせて、さまざまな可能性を一緒に調べてみましょう。教育支援センター(適応指導教室)や不登校支援団体に相談するのも良い方法です。

専門家との連携

スクールカウンセラー、臨床心理士、不登校支援の専門家など、必要に応じて専門家の力を借りることも大切です。客観的な視点からアドバイスをもらえることで、新たな道が見えてくることもあります。

家庭での安心感を守る

何よりも、家庭が安心できる場所であることが重要です。「ここにいていいんだ」という安心感が、お子さんの心のエネルギーを回復させ、前に進む力になります。

保護者の方へのメッセージ

不登校のお子さんを持つ保護者の方は、誰よりも心配し、悩んでいらっしゃることでしょう。しかし、お子さんの将来は決して暗いものではありません。

社会は確実に変化しています。多様な生き方、多様な働き方が認められる時代になってきました。学校という一つの道だけが、人生の成功を決めるわけではないのです。

不登校を経験した多くの方が、「あの時期があったから今の自分がある」と振り返っています。辛い経験も、その人の強みや個性を形作る大切な要素になり得るのです。

今は見えないかもしれませんが、お子さんには無限の可能性があります。その可能性を信じ、寄り添い、見守ること。それが保護者の方にできる最も大切なサポートです。

一歩ずつ、焦らず、お子さんと一緒に歩んでいきましょう。きっと、その先には明るい未来が待っています。

寄稿者

茨木 泰丈

公益社団法人学校教育開発研究所 事務局長・理事
2024年・名古屋市 「今後の不登校施策に関する有識者等会議」委員、2025年・東広島市「雲 (クラウド)の上で~思春期の子育てを語り合う集い~」 講師、YouTube 「フリースクールで頑張る先生のための応援チャンネル」運営者、子どものための「学校適応感尺度」 アセス コーディネーター、学習心理支援カウンセラー(専門課程)修了。国家資格キャリアコンサルタント

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