中学生の不登校率が高い理由|思春期特有の課題を理解する

お子さんが中学生になり、不登校についての話題を耳にする機会が増えたという保護者の方も多いのではないでしょうか。文部科学省の調査では、中学生の不登校率が年々増加していることが報告されています。中でも、小学校から中学校への進学時に不登校が急増するという特徴が見られます。
なぜ中学生になると不登校率が高くなるのでしょうか。その背景には、思春期特有の身体的・精神的な変化や、発達段階における課題が深く関係しています。この記事では、中学生の不登校率が高い理由を思春期の特徴と関連付けながら解説し、保護者の皆さんが子どもをサポートするためのヒントをお伝えします。
中学生の不登校率が高い背景
文部科学省の調査によると、中学生の不登校率は記事作成当時、毎年過去最高を更新している状態です。クラスに二人に一人が不登校状態と言っても過言ではありません。この背景には、思春期特有の課題だけではなく、社会構造の変化など複雑に絡み合っています。
思春期特有の身体的変化と不登校の関連性

思春期は、子どもたちの身体と心が大きく変化する時期です。この変化が不登校の引き金となることがあります。
身体の成長によるストレス
思春期には、急激な身体の成長が起こります。身長が伸びたり、声変わりが始まったりといった変化は、子どもにとって誇らしい一方で、戸惑いやストレスを伴う場合があります。特に、自分の身体的な変化を他人と比較してしまうことで、自己肯定感が低下することもあります。
起立性調節障害などの身体的症状
思春期の子どもに多い症状として、起立性調節障害が挙げられます。これは、自律神経の働きが不安定になることで、朝起きられない、立ちくらみがするなどの症状が現れるものです。このような身体的な不調が原因で学校に行けなくなるケースも多く見られます。

思春期特有の精神的変化と不登校の関連性

思春期は、子どもたちが自分自身や周囲の環境について深く考え始める時期でもあります。この精神的な変化が、不登校に影響を与えることがあります。特に、保護者世代(30代〜50代前半)とは過ごしてきた社会構造が違います。
簡単な例で挙げると、我々保護者世代は当時、学校生活以外で友達と連絡を取ったり何か約束をする場合、相談をする時など、相手の家の電話に掛けなければいけませんでした。そうなると、多くの場合、最初に電話に出るのは、相手先の保護者の方で、保護者に挨拶をし、友達と話したいと要件を伝えようやく話ができます。
ところが、今は、いつでもどこでもいつまでも自由に個人個人が連絡を取ることができます。たったこれだけを取り上げても、前者はコミュニケーションを取る相手が後者の2倍になります。つまり、私たち親世代とは圧倒的にコミュニケーションを取っている機会が現代の子どもたちは少ないことになります。
トレーニング機会が少なければ、当然、人と繋がる、関係が崩れた時に修復する、と言った力も高まりません。こうしたスキルが過去と比べて不足している状況で、精神的変化も起こるわけですので、当然脆さが顕在化しやすくなります。

自己意識の高まりと人間関係の難しさ
上記のようなことも含め、思春期は子どもたちは自分の存在や他人からの評価を強く意識するようになります。友人関係での小さなトラブルや、教室内での居場所のなさを感じることで、学校に行きたくないという気持ちが生じることがあります。
進路や将来への不安
さらに中学生になると、「大人の世界」が小学生の時よりもグッと近づいてきます。学校でも進路について考える機会が増え、高校進学ごろには、(公立中学校の生徒なら)これまで当たり前のように一緒に生活していた友達なども、自分の意思で個別の道を選択する、さて「自分は何が得意なのか」「将来どうなりたいのか」といった問いに向き合う中で、不安やプレッシャーを感じる子どもも少なくありません。このような心理的な負担が、不登校のきっかけになることもあります。

無気力感や不安感の増加
思春期には、ホルモンバランスの変化が感情にも影響を与えます。特に、無気力感や漠然とした不安感が強くなることがあり、これが学校生活に対する意欲の低下につながる場合があります。


中学生期特有の環境的要因
思春期の身体的・精神的な変化に加えて、中学生という環境自体が不登校率の増加に影響を与えることもあります。
学習内容の難化
中学生になると、学習内容が一気に難しくなり、評価も小学生時代よりもよりはっきりしたものになります。小学校では得意だった教科が他の人よりもできない、苦手かもしれない、とつまづくことで、学業への自信を失い、学校に行きたくなくなるケースもあります。
人間関係の複雑化
中学校では、クラス替えや部活動を通じて新たな人間関係が生まれます。しかし、友人関係がうまくいかない場合、それが学校生活全体に影響を及ぼすことがあります。友人関係やいじめを含めたトラブル、自分以外の誰かがいじめられているような環境も含めて、ざわざわした生活環境だと、学習どころではない、という気持ちになる場合もあります。

教師との関係
子どもたちが思春期に入ると、教師との関係も変化します。大人への反発心が芽生える一方で、教師からのサポートを求める気持ちもあり、このバランスが崩れると不登校につながることがあります。

保護者ができるサポートとは?
中学生の不登校率が高い理由を理解した上で、保護者としてどのように対応すれば良いのでしょうか。
子どもの気持ちに寄り添う
子どもが何を感じ、何に困っているのかを知るためには、まず話を聞くことが大切です。否定せずに「そう感じるんだね」と受け止めることで、子どもは安心感を得られます。
また、これまでは「生きていくための価値(積み木)を教わる(もらう)上下の関係」に近かった児童期から、「自分で価値観(積み木)を(一旦壊してから自分なりに)創造していく思春期に入るわけですので、親も今までの関わり方を捨て新しい付き合い方に変えていく「人生転機」を迎えます。

専門家の力を借りる
そうした意味においても、気持ちに寄り添うとはどういうことか、どのように理解したら良いのか、と言ったことを、不登校が長期化してきたかなと感じたら、学校のスクールカウンセラーや教育相談機関、フリースクールなどに相談することを検討しましょう。専門家のアドバイスを受けることで、適切な子ども理解、対応のヒントが見つかる場合がよくあります。

学校との連携を大切にする
学校と連携し、保護者としての不安な気持ち、今後の見通しのことなど、学校の先生と一緒に子どものことについて考える環境づくりを進めましょう。連携や子どもの再挑戦に向けた気持ちが育っていく中で、短時間の登校や別室登校など、柔軟な対応が可能になる場合もあります。

家庭での安心感を提供する
家庭は、子どもにとって「心の拠り所」です。家庭内での安心感が、不登校からの回復を後押しする大きな力になります。

まとめ:思春期を理解し、子どもを支えるために
中学生の不登校率が高い理由には、思春期特有の身体的・精神的な変化や、中学生という環境の特性が深く関係しています。保護者として、これらの背景を理解し、子どもの気持ちに寄り添うことで、適切なサポートが可能になります。
不登校は決して「特別なこと」ではありません。むしろ、多くの子どもたちが何らかの困難を抱えながら成長している証です。焦らず、一歩ずつ子どもと向き合いながら、安心できる環境を整えていきましょう。

