不登校の主な引き金|子どもが学校に行けない5つの理由とその背景

不登校について悩んでいるお母さん、または子どもの気持ちをもっと理解したいと思っている方へ。

この記事では、不登校の「引き金」や「きっかけ」について、文部科学省の最新データと専門家としての視点をもとにお話しします。

不登校は決して特別なことではなく、文部科学省の調査によると、中学生の 約15人に1人 が不登校の状況にあると言われています。不登校を引き起こす要因は一つではなく、いくつもの要素が絡み合うことが多いです。この記事を通じて、お子さんの気持ちに寄り添い、次の一歩を考えるヒントになれば幸いです。

目次

不登校につながる主な「引き金」

不登校は「これが原因だ」と一言で説明できるものではありません。私たち専門家の肌感覚として、特に多いと感じられる「引き金」をいくつか挙げ、それぞれの特徴をお伝えします。これらはあくまで一般的な傾向であり、お子さん一人ひとりの状況は異なることを前提にお読みいただければと思います。

1. いじめや友人関係のトラブル

子ども同士のいじめや友人関係の悩みは、不登校のきっかけとしてよく見られるものです。

学校は子どもにとって大切な社会の場ですが、そこで孤立したり、他者との関係で傷ついたりすると、学校に行くこと自体が大きなストレスになってしまいます。

特に思春期の子どもは感受性が高く、些細な出来事でも深く傷ついてしまうことがあります。このような場合、まずはお子さんの話をじっくり聞き、安心できる環境を整えることが大切です。

2. 学業不振や学習への不安

勉強が難しいと感じたり、成績が思うように伸びなかったりすることも、不登校の引き金になりやすいです。

中学生になると学習内容が難しくなるだけでなく、テストや進路についてのプレッシャーも増します。その結果、「自分は勉強ができない」「学校に行っても意味がない」と感じてしまう子どもも少なくありません。

このような場合は、学業だけに注目するのではなく、お子さんの得意なことや興味を持てる分野を見つけてあげることが大切です。小さな成功体験を積み重ねることで、少しずつ自信を取り戻せるかもしれません。

3. 教師との関係や学校環境

子どもが学校に行きたくない理由として、教師との相性や学校の雰囲気が合わないと感じることもあります。例えば、授業中の注意がストレスになったり、学校全体のルールや雰囲気が子どもにとって居心地が悪い場合です。

最近では、「学校に行く理由が見つからない」という声も増えています。これは、ソーシャルボンド理論(社会的絆理論)という考え方で説明できます。この理論では、「行かない理由」ができたのではなく、「行く理由」がなくなった結果、不登校になると考えます。つまり、学校が「楽しい」「安心できる」と感じられないと、自然と足が遠のいてしまうのです。

4. 家庭環境の変化や親子関係の問題

家庭内でのトラブルや変化も、不登校につながることが多いです。

例えば、両親の離婚や経済的な困窮、親子関係のすれ違いなどが挙げられます。家庭は子どもにとって安心できる場であるべきですが、家庭内にストレスがある場合、学校生活にも影響を及ぼすことがあります。

このような場合は、家庭内でのコミュニケーションを見直し、子どもが安心して話せる環境を作ることが大切です。何気ない会話の中で、子どもの本音が見えてくることもあります。

5. 身体的・心理的な要因

起立性調節障害(朝起きられない病気)や不安障害、うつ症状など、身体的・心理的な問題も、不登校の引き金として挙げられます。

これらは本人の意思とは関係なく学校生活を難しくするものであり、専門的な支援が必要です

また、発達障害の特性を持つお子さんの場合、集団生活に馴染めず不登校になるケースもあります。このような場合には、学校外の居場所や支援機関を活用することも選択肢の一つです。

「行かない理由」ではなく「行く理由」を考える

不登校について考えるときに大切なのは、「なぜ行かないのか」ではなく、「どうすれば行きたいと思えるか」を考えることです。

前述したソーシャルボンド理論によれば、不登校は「行かない理由」ができたのではなく、「行く理由」がなくなった結果だとされています。

例えば、学校以外の居場所や活動を見つけることで、学びを止めない環境を整えることができます。お子さんが「ここなら安心」「これならやってみたい」と感じられる場所やきっかけを見つけることが大切です。

保護者としてできること

不登校は、保護者にとっても大きな不安や戸惑いを伴うものです。でも、以下のポイントを意識することで、お子さんにとってより良いサポートができるはずです。

1. 子どもの気持ちを受け止める

まずはお子さんの話をしっかりと聞き、否定せずに受け止めることが大切です。「なぜ学校に行かないの?」と責めるのではなく、「どんな気持ちでいるの?」と優しく問いかけてみてください

2. 学校以外の選択肢を検討する

フリースクールやオンライン学習など、学校以外にも学びの場はたくさんあります。お子さんにとって安心できる環境を見つけることで、学びを続けるきっかけを作ることができます

3. 専門機関に相談する

一人で抱え込まず、学校のスクールカウンセラーや地域の教育相談機関など、専門家に相談することをお勧めします。専門的な視点から、お子さんに合った支援方法を提案してもらうことができます

まとめ

不登校は、決して特別なことではありません。統計的にも多くの子どもが同じような悩みを抱えており、その背景には多様な「引き金」があります。大切なのは、数字や理由にとらわれることなく、お子さん一人ひとりの気持ちや状況に寄り添うことです。

不登校は一時的な状態であり、適切な理解と支援があれば、お子さんは必ず自分らしい道を見つけることができます。お母さんとしてできることを少しずつ実践し、専門家の力も借りながら、お子さんの未来を一緒に支えていきましょう。

寄稿者

茨木 泰丈

公益社団法人学校教育開発研究所 事務局長・理事
2024年・名古屋市 「今後の不登校施策に関する有識者等会議」委員、2025年・東広島市「雲 (クラウド)の上で~思春期の子育てを語り合う集い~」 講師、YouTube 「フリースクールで頑張る先生のための応援チャンネル」運営者、子どものための「学校適応感尺度」 アセス コーディネーター、学習心理支援カウンセラー(専門課程)修了。国家資格キャリアコンサルタント

目次