不登校を祖父母に理解してもらえないとき|世代間ギャップを越えて家族が味方になるまで

不登校を祖父母に理解してもらえない悩みをテーマに、住宅街の道を並んで歩く高齢の男女と保護者の後ろ姿

「うちの子が学校に行けていない」と祖父母に伝えたとき、返ってきた言葉に胸が痛んだ経験はありませんか。「甘やかしすぎじゃないの」「昔はそんな子はいなかった」「親の育て方の問題では」——不登校を祖父母に理解してもらえない、という悩みは、実はとても多くのご家庭が抱えています。お子さんのことで精一杯なのに、さらに身内から責められるような言葉を受けると、心がすり減っていくのは当然のことです。まず知っていただきたいのは、そのしんどさはあなたの受け止め方が弱いからではなく、時代の価値観のずれから生まれているものだということです。

この記事では、祖父母世代がなぜ不登校を理解しにくいのかという背景から、感情ではなく事実で伝える方法、家族のあいだで「言わないこと」を決める境界線の引き方、そして祖父母が心強い味方になったご家庭の変化まで、順を追ってお話ししていきます。すべてを今日から実行する必要はありません。読みながら「これならできそう」と思えるものを、一つだけでもお持ちかえりください。

目次

なぜ祖父母世代には不登校が伝わりにくいのか

地域の交流センターのロビーで、テーブル越しに向かい合って話す高齢の女性と保護者

祖父母の言葉に傷ついたとき、多くの保護者の方は「どう言い返せばいいのか」を考えます。けれど、その前に相手の立場から背景を整理しておくと、同じ言葉を聞いても受けるダメージがずいぶん変わってきます。理解してもらうための第一歩は、相手を理解することからかもしれません。

「学校は行くもの」が当たり前だった時代

祖父母世代が子ども時代を過ごした頃、学校を休むことは病気のときくらいで、「行きたくない」という気持ちを言葉にできる空気そのものがありませんでした。不登校という言葉も概念も、社会に共有されていなかったのです。つまり祖父母は、意地悪で否定しているのではなく、その状況を説明する言葉を持っていない、というのが実際のところです。

知らないものに出会ったとき、人は自分の知っている枠組みに当てはめて理解しようとします。「学校に行けない=甘え」「本人が弱い」「家庭のしつけ」という説明は、その世代にとっては唯一持っている引き出しなのです。だからこそ、新しい引き出しを一つ手渡してみることが、理解への近道になるかもしれません。

きつい言葉は、心配の裏返しであることが多い

「このままでは将来どうするんだ」という言葉の奥にあるのは、たいていの場合、孫を大切に思う気持ちです。ただ、その心配を表現する語彙が「叱咤激励」しかないため、受け取る側には非難として届いてしまいます。言葉の表面ではなく、その下にある「孫が心配だ」という感情に目を向けると、対話の入り口が見つかりやすくなります。

もちろん、「心配だから仕方ない」と我慢する必要はまったくありません。ただ、相手を敵と見なすか、情報が足りていない味方候補と見なすかで、こちらの対応の選択肢は大きく変わります。もし余裕のある日には、言われて苦しかった言葉を一つだけ紙に書き出し、その横に「心配」「不安」など、裏にありそうな気持ちを書き添えてみてください。次に同じ言葉を聞いたときの受け止め方が、少しやわらぐことがあります。

板挟みで消耗しているご自身を、まずねぎらってみませんか

お子さんの気持ちを守りながら、祖父母の心配にも応え、さらに学校ともやり取りをする。この状態は、想像以上にエネルギーを使います。「祖父母に理解してもらえないこと」でご自身を責める必要は、どこにもありません。数十年かけて形づくられた価値観が、一度の会話で変わらないのは、むしろ自然なことです。

今日は伝わらなくても構わない。半年後、一年後に「少しわかってきた」と言ってもらえたら十分。そのくらいの時間感覚で構えておくと、一回ごとの会話に一喜一憂せずにすみます。お子さんの回復と同じように、家族の理解もゆっくり進んでいくものです。

感情ではなく事実で伝える——制度と調査を味方にする

祖父母に説明するための資料と眼鏡、壁掛けカレンダーを机の上に広げた手元のクローズアップ

「わかってほしい」という気持ちで話すと、どうしても感情的な応酬になりがちです。そこでおすすめしたいのが、自分の意見としてではなく、社会の変化として伝えるという方法です。第三者の情報は、身内の言葉よりも受け入れられやすいという特徴があります。

国の調査を「今の学校の姿」として共有する

文部科学省は毎年、「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」を公表しています。令和6年度の結果も報道で取り上げられていますので、新聞記事や公式サイトのページを一緒に見ていただくのも一つの方法です。「うちだけの問題ではなく、全国的に起きている変化なんだよ」と伝わるだけで、ご理解が進むこともあります。

このとき、細かい数字を暗記して説明しようとしなくて大丈夫です。むしろ、印刷した資料や画面をそっと差し出して、「こういう調査があるみたい」と一緒に眺めるくらいの温度感のほうが、押しつけになりません。祖父母世代は、活字になっている情報を信頼しやすい傾向もあります。

「学校以外で学ぶ」を国が認めていることを伝える

教育機会確保法(義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律)では、学校を休むことの必要性が認められ、学校以外の場での多様な学びが尊重されるという考え方が示されました。「無理に登校させないのは、親が甘いからではなく、国の方針でもあるんです」と言えることは、大きな支えになります。

フリースクールや通信制高校という選択肢も、今では珍しいものではなくなりました。祖父母世代にとっては聞き慣れない言葉かもしれませんので、「大学に進学する子もたくさんいる進路の一つ」という説明を添えると、イメージが伝わりやすくなります。

伝えるときの言葉選びのコツ

祖父母に伝わりやすい話し方のポイント
・「甘やかしていない」と反論せず、「専門家にも相談しています」と経過を伝える
・「今は充電期間で、そのあと進路に向けて動く予定です」と見通しをセットで話す
・「私たちが子どもの頃とも、今の学校はずいぶん変わってきているようです」と社会の変化として説明する
・「心配してくれてありがとう」を最初か最後にそっと添える

とくに助けになるのが、「見通しをセットで伝える」ことです。祖父母がいちばん不安に思っているのは、孫の将来がどうなるのかという一点に尽きます。「高校進学の準備は進めています」という一言があるだけで、心配の総量がぐっと減ります。今は動けなくても、その先に進む先があると知れば、待つことができる方は少なくありません。

「言わないこと」を決める——家族の境界線の引き方

祖父母の家の縁側で、鉢植えに水をやる中学生年代の男子生徒

理解を求める働きかけと同じくらい支えになるのが、お子さんと保護者ご自身を守る線引きです。すべてを共有しなければならない、という決まりはありません。情報の量を調整することは、隠しごとではなく家族を守る工夫です。

共有すること・しないことを夫婦で先に決めておく

「学校を休んでいること」は伝えるけれど、「昨日は何時に起きたか」「ゲームを何時間していたか」といった日々の細部は伝えない。そんなふうに、あらかじめ線を決めておくと迷いが減ります。細かい生活の様子は、心配の材料を増やしてしまうことが多いためです。

できれば、この線引きはご夫婦やパートナーと一緒に決めておくと安心です。片方が黙っていることをもう片方が話してしまうと、家庭内で新たな摩擦が生まれてしまいます。「祖父母には、ここまでを共有しよう」と合意しておくだけで、対応がぶれなくなります。

子ども本人の前で話題にしない約束をお願いする

もっとも守りたいのは、お子さんの耳に届く言葉です。「学校はどうした」「いつから行くんだ」という問いかけは、たとえ善意でも、回復の途中にある子どもには重すぎます。「本人の前では学校の話をしないでほしい」という一つのお願いに絞って伝えると、受け入れてもらいやすくなります。

お願いするときは、理由も添えてみてください。「今は学校のことを考えると体調が崩れてしまうので、しばらく触れないでほしい」と具体的に伝えると、単なる遠慮ではなく必要な配慮なのだと伝わります。何度か繰り返すうちに、少しずつ定着していきます。

距離をとることも、立派な選択肢です

どうしても対話が難しいときは、会う頻度を減らす、電話の時間を短くする、といった物理的な距離のとり方も選べます。関係を切るためではなく、お互いが冷静でいられる距離を保つためです。今の最優先はお子さんの回復であり、その次に大事なのは保護者であるあなたの心の余力です。

また、祖父母への説明をすべてご自身で背負い込まなくても構いません。スクールカウンセラーやフリースクールの担当者から状況を説明してもらう、面談に同席してもらう、という方法もあります。第三者が入ることで、家族の会話が急に穏やかになることは、実際によくあります。

祖父母が味方になったとき、家族はこう変わります

玄関先で靴を履く中学生と、荷物を手渡す祖母と保護者の様子

時間はかかりますが、祖父母が理解者に変わっていくご家庭はたくさんあります。そして味方になったときの祖父母は、保護者にとって、これ以上ないほど頼もしい存在になります。

祖父母の家が「第三の居場所」になることがあります

学校にも家にも息苦しさを感じているとき、祖父母の家は評価されない場所として機能します。畑仕事を手伝う、買い物についていく、囲碁や料理を教わる——そうした時間が、お子さんの自信を静かに取り戻していくきっかけになります。「学校の話をしない大人」がひとりいるだけで、子どもの世界はぐっと広がります。

実際に、平日の昼間に祖父母の家で過ごすうちに生活リズムが整い、そこから外出や学びの場に足を運べるようになったというお話も聞かれます。役割を持てること、誰かに必要とされることは、回復の大きな支えになります。

進路の説明会に一緒に来てもらう

通信制高校やフリースクールの説明会・見学会に、祖父母にも同行してもらうのは、とても心強い方法です。実際の校舎や在校生の様子、卒業後の進路を目にすると、言葉で何度も説明するよりも早く納得していただけます。「ちゃんとした学校なんだね」という一言が出たとき、家族の空気は大きく変わります。

また、進路のことを一緒に考えてもらう立場になると、祖父母は「批評する人」から「応援する人」へ役割が変わります。人は、当事者として関わったものには前向きになるものです。あえて相談役をお願いしてみるのも、遠回りのようで近道かもしれません。

小さな変化を、こまめに報告する

「今日は自分から起きてきました」「フリースクールで一日過ごせました」といった短い報告を折々に伝えていくと、祖父母のなかにも回復のイメージが育っていきます。見通しが持てると、人は待てるようになります。良い知らせを分かち合う相手として招き入れるイメージです。

そして、理解を示してくれたときには、「ありがとう、助かっています」と言葉にして返してみてください。祖父母もまた、孫のためにどうしたらいいのか分からず戸惑っている一人です。感謝を受け取ることで、その戸惑いが安心に変わっていきます。

まとめ|理解は、時間をかけて育っていきます

不登校を祖父母に理解してもらえないつらさは、お子さんへの心配とはまた別の、じわじわと効いてくる痛みです。けれど、価値観の違いは埋められないものではなく、社会の変化を伝える情報と、守るべき境界線と、少しの時間があれば、ゆっくりと歩み寄っていけます。今日うまく伝わらなくても、それは失敗ではなく、途中経過です。

不登校は、お子さんが自分を守るために必要としている一時的な停留期間なのかもしれません。その時間のなかで力を蓄えた子どもたちが、フリースクールや通信制高校で新しい挑戦を始め、やりたいことを見つけていく姿を、私たちは何度も見てきました。いつか祖父母が孫の成長を心から喜んでくれる日を思い描きながら、今日は無理のない一歩から始めてみませんか。ご家族が少しずつ同じ方向を向けるよう、私たちも一緒に考えていきます。

不登校から高校進学準備ができるフリースクール

投稿者

宮川 優輝

日本大学文理学部教育学科卒業。滋慶学園東京福祉専門学校で広報業務・入試事務を経て、内閣府認定公益財団法人こども教育支援財団東京大志学園さいたま校(フリースクール)にて教室担当を務め、不登校支援を行う。現在は一般社団法人こども教育支援機構クラーク国際中等部さいたまキャンパス教室担当。

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