不登校の支援制度を知らなかった|今から確認できる制度と窓口のリスト

不登校の支援制度を知らなかった保護者が、平日の昼間に中学校前の住宅街の歩道を歩いている様子

「そんな制度があるなんて、知らなかったです」——お子さんの不登校についてご相談にいらした保護者の方から、私たちがいちばん多くうかがう言葉のひとつです。

制度は少しずつ増えている一方で、学校から一覧にして手渡される機会は多くないのが実情です。知らなかった期間があっても、お子さんの選択肢が消えてしまうわけではありません。今日知っていただけたことをきっかけに、ゆっくり始めていけます。

ここでいう支援制度とは、学校に通いづらい時期にも、学びの機会や居場所、ご家庭の経済的な負担をささえるために、国や自治体、学校が用意している仕組みのことです。こうした仕組みは少しずつ広がってきましたが、必要としているご家庭に情報が届くまでには、どうしても時間がかかります。この記事では、見落とされやすい制度と窓口を「学び」「お金」「相談」の三つに分けて、確認しやすい形で整理してみます。

この記事でお伝えしたいこと

・知らなかったことは、保護者の方の責任ではないこと
・制度は「学びの保障」「経済的支援」「相談窓口」の三つに分けると見通しが立ちます
・すべてを一度に使おうとせず、今のお子さんに合う一つから確かめていけば大丈夫です

目次

「支援制度を知らなかった」は、めずらしいことではありません

制度を知らないまま数か月、あるいは一年以上を過ごしてこられたご家庭は、決してめずらしくありません。むしろ、それが多数派だと感じています。

市の相談窓口のカウンターで、職員と向かい合って相談する保護者の様子

文部科学省が毎年行っている児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査でも、学校に行きづらさを抱える子どもたちの状況が継続して報告されています。制度の整備もそれに合わせて進んできました。けれども、できた制度が一軒一軒のご家庭に届くまでには、どうしても時間差が生まれます。

情報が届きにくい、いくつかの事情

ひとつは、制度の担当がばらばらであることです。学びに関することは学校と教育委員会、経済的な支援は自治体の別の部署、心の相談は保健センターや児童相談所というように、窓口が分かれています。ご家庭から見れば同じ「不登校の相談」でも、行政の中では別のテーマとして扱われているのです。

もうひとつは、学校の先生方自身も、すべての制度を把握しきれていない場合があることです。担任の先生が教えてくださらなかったのは、意地悪でも怠慢でもなく、単にその情報が先生の手元まで来ていないことが少なくありません。誰かを責める必要のない「すれちがい」だと考えていただいて大丈夫です。

知った時点から始めても、遅くはありません

多くの制度は、申請した時点以降について適用されます。過去にさかのぼれないものがあるのは事実ですが、それは「これまでが無駄だった」という意味ではありません。お子さんが家で過ごしてこられた時間は、エネルギーを回復するために必要な時間でした。

もし今日ひとつだけ動いてみるとしたら、在籍校の担任の先生に「今、利用できる支援にはどんなものがありますか」と尋ねてみるところからで十分です。電話でも、連絡帳やメールでもかまいません。これからの数か月をすこし楽にする手立てとして制度を使っていく、という順番で大丈夫です。

学びを保障する制度:出席扱い・校内の支援室・学びの多様化学校

学校に毎日通えない時期でも、お子さんの学びを記録に残し、評価につなげていく仕組みがいくつもあります。代表的なものが出席扱いの制度と、学校内外の支援の場です。

机の上のノートと筆記用具、椅子に掛けられた通学カバンを手元だけ写した様子

出席扱い制度

出席扱い制度とは、学校以外の場所で学んだ時間や、自宅でのオンライン学習を、校長先生の判断で出席として記録できる仕組みのことです。フリースクールや教育支援センターへの通所、一定の条件を満たした家庭でのICT学習などが対象になり得ます。お子さんが今している学びを、記録の上でも「なかったこと」にしないための制度です。

判断するのは在籍校の校長先生なので、まずは担任の先生やスクールカウンセラーの方に「出席扱いについて相談したい」とお伝えするところから始めてみるのもよいかもしれません。学習の記録をどんな形で残せばよいか、どのくらいの頻度で学校と共有すればよいかは、学校ごとに少しずつ運用が異なります。

校内教育支援センター(別室・サポートルーム)

教室には入りづらくても、学校の中の別室なら過ごせるというお子さんは多くいらっしゃいます。近年は校内に支援室を設ける学校が増え、専任のスタッフが配置されているところもあります。登校時間をずらす、保健室経由で入るなど、運用の工夫もしやすい場です。

教育支援センター(適応指導教室)

自治体が設置している公的な通所の場で、多くは無料で利用できます。学習支援のほか、体験活動や少人数での交流が行われ、在籍校と連携して出席の扱いが検討されることも一般的です。お住まいの市区町村の教育委員会にお問い合わせいただくと、場所や見学方法を案内してもらえます。

学びの多様化学校

学びの多様化学校とは、不登校を経験した子どもたちの状況に合わせて、授業時間数やカリキュラムを柔軟に組み立てられるよう、国が特別に認めた学校のことです。全国に少しずつ増えており、転入学という形で通い始めるお子さんもいます。通学できる範囲にあるかどうか、教育委員会に確認してみるのもひとつの方法です。

学びに関して確認しておきたいこと
・在籍校で出席扱いの相談ができるか
・校内に別室や支援室があるか
・自治体の教育支援センターや学びの多様化学校の場所

経済的な支援:フリースクールの利用料助成や就学援助

フリースクールや家庭学習の教材にかかる費用は、ご家庭にとって小さくない負担です。自治体によっては、その一部を助成する制度が用意されています。

図書館の窓際の席で本を読んでいる中学生の様子

フリースクール利用料の助成

たとえば東京都では、不登校のお子さんがフリースクール等を利用した際の費用について、その一部をささえる仕組みが設けられています。自治体独自に同様の支援を行っているところもあり、名称も「補助金」「給付金」「調査研究への協力謝礼」などさまざまです。名前が違うだけで、実質的に利用料をささえてくれる制度は意外と身近にあります。

申請には、利用している施設の在籍証明や領収書が必要になることが多いようです。フリースクールを検討する段階で「助成の申請に対応していますか」と尋ねておくと、後の手続きがスムーズになります。

就学援助と、高校進学時の支援

義務教育の期間は、学用品費や給食費などをささえる就学援助の制度があります。不登校かどうかに関わらず、所得等の要件で利用できるものです。また高校進学後には、授業料をささえる就学支援金や、各自治体の奨学のための給付金があり、通信制高校でも対象となる仕組みが整っています。

地域の情報をまとめて探せる場所

東京都の「TOKYO多様な学びの場・居場所ナビ」のように、フリースクールや居場所を地図から探せる情報サイトを整備している自治体も出てきました。お住まいの地域の教育委員会のホームページに、同じような一覧が掲載されていることもあります。まずは「○○市 不登校 支援」と検索してみるところから始めてみてください。

相談できる窓口には、どんなところがありますか?

学校の中にも外にも、無料で相談できる窓口があります。どこか一つに決める必要はなく、話しやすいと感じたところを使っていただいて構いません。

学校の中の窓口

スクールカウンセラーは、お子さんだけでなく保護者の方の相談も受けています。また、福祉の視点から制度につないでくれるスクールソーシャルワーカーが配置されている地域も増えました。担任の先生に話しづらいときは、学年主任の先生や養護教諭の先生に声をかけてみる方法もあります。

学校の外の窓口

教育委員会の教育相談室、自治体の子ども家庭支援センター、保健センター、児童相談所などが、継続的に相談にのってくれます。体調面での不安があるときは、かかりつけの小児科や心療内科に相談することもできます。複数の窓口に同時に相談しても、まったく問題はありません。

保護者どうしがつながれる場

親の会や、フリースクールが開いている保護者向けの座談会も、大切な窓口のひとつです。制度の情報は、同じ経験をした保護者の方から伝わってくることが本当に多いと感じています。お話を聞くだけの参加でも歓迎されますので、気持ちに余裕のあるときに覗いてみるのもよいかもしれません。

相談するときに伝えると話が早いこと
・今、家でどんなふうに過ごしているか
・学校と、どの程度連絡が取れているか
・ご家庭として、いちばん困っていること

無理のない進め方と、高校進学までの見通し

制度のリストを前にすると、全部やらなければと感じてしまいがちですが、順番は一つずつで大丈夫です。お子さんの今の状態に合うものから、ひとつだけ選んでみていただけたらと思います。

自宅の台所で、立ったまま中学生と短く言葉を交わす母親の様子

最初の一歩は「確認」だけで十分です

申し込みや見学の前に、まず「どんな制度があるか聞いてみる」という段階があります。電話一本、メール一通で終わる確認も多く、そこで知った情報をメモして家にしまっておくだけでも、保護者の方の気持ちはずいぶん軽くなります。使うかどうかは、あとから決めてかまいません。

お子さんに伝えるときは、選択肢として

制度の話をお子さんにするときは、「こういう場所もあるみたいだよ」と情報として置いておくくらいがちょうどよいことが多いです。すぐに反応がなくても、数週間後にふと「あれ、どんなところ?」と聞いてくることがあります。お子さんの中で準備が整うまでの時間を、そっと待っていただけたらと思います。

中学卒業後の進路は、思っているより広がっています

高校進学の段階になると、全日制だけでなく、通信制高校や定時制、サポート校など、通い方を選べる選択肢がぐんと増えます。クラーク国際中等部では、中学生の時期に生活のリズムと学ぶ楽しさを取り戻しながら、Clark NEXTをはじめとした次のステージへつながる準備を一緒に進めています。今の不登校の時期は、進路が閉じる時間ではなく、合う形を探すための時間です。

まとめ

「知らなかった」という言葉の裏側には、いつも、お子さんのために何かできることはないかと探し続けてきた保護者の方の時間があります。制度を知らなかった期間も、ご家庭が立ち止まっていたわけではありません。出席扱い、校内の支援室、教育支援センター、学びの多様化学校、フリースクール利用料の助成、そして各地の相談窓口。これらは、お子さんの歩みをささえるために社会が用意したサポートです。

不登校は、お子さんがこれから先も続く長い人生の中で、いったん呼吸を整えている一時期です。その時期に出会った居場所や大人との関わりが、後になって「あのとき動いてよかった」と思える土台になっていきます。

やりたいことに挑戦し、自分で決めた進路を歩んでいくお子さんの姿は、今はまだ想像しにくいかもしれません。それでも、ひとつ確認してみる、ひとつ聞いてみる——その小さな行動の積み重ねが、確かにその日へつながっていきます。どうか、保護者の方ご自身のことも、同じくらい大切にしてお過ごしください。

よくある質問

出席扱い制度は、親から学校に相談してもよいのでしょうか?

はい、保護者の方から担任の先生やスクールカウンセラーに相談していただいて大丈夫です。最終的に判断するのは校長先生ですが、まずは「出席扱いについて教えてください」と尋ねるところから話が始まります。学校ごとに運用が少しずつ違いますので、学習の記録の残し方も一緒に確かめていけると安心です。

フリースクールの費用を助成してもらえる制度は、どこで調べられますか?

お住まいの市区町村や都道府県の教育委員会のホームページに、助成や補助の案内が掲載されていることが多いです。東京都のように、フリースクール等の利用料の一部をささえる仕組みを設けている自治体もあります。名称がさまざまですので、窓口に電話で「フリースクール利用にかかる支援はありますか」と尋ねていただくと確かめやすいと思います。

今まで制度を知らずに過ごしてきました。もう遅いでしょうか?

遅すぎるということはありません。多くの制度は申請した時点から先に適用されますので、今日知っていただいたところから始められます。これまでお子さんが家で休んできた時間も、次に進むために必要な回復の時間でしたので、どうかご自身を責めないでいただけたらと思います。

不登校から高校進学準備ができるフリースクール

投稿者

宮川 優輝

日本大学文理学部教育学科卒業。滋慶学園東京福祉専門学校で広報業務・入試事務を経て、内閣府認定公益財団法人こども教育支援財団東京大志学園さいたま校(フリースクール)にて教室担当を務め、不登校支援を行う。現在は一般社団法人こども教育支援機構クラーク国際中等部さいたまキャンパス教室担当。

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