不登校の自宅学習が成績評価に反映される時代へ|令和6年の新制度を保護者向けにわかりやすく解説

不登校の自宅学習が成績評価に反映される制度について、母親がリビングのテーブルで文書を読んでいる場面

お子さんが不登校の状態にあるとき、保護者の方が最も心配されることのひとつが「内申点がつかないのではないか」という不安ではないでしょうか。自宅でコツコツと取り組んできた学習が、学校の成績にまったく反映されないとしたら——そう考えると、やるせない気持ちになるのは当然のことだと思います。でも、不登校中の自宅学習が成績評価に反映される制度が、令和6年8月の文科省通知によって法令上明確化されました。お子さんの努力を、正当に認めてもらえるルートが、いま確かに広がっています。

この記事では、その制度の概要と、保護者の方が学校に相談する際の具体的な進め方を、できるだけわかりやすくお伝えします。難しい法令の言葉を読み解くよりも、「わが子のためにまず何をすればよいか」がイメージできるよう、一緒に考えていきましょう。

目次

令和6年の文科省通知で何が変わったのか

保護者が自宅の学習机で通知書類と学習記録ノートを並べて確認している場面

令和6年8月、文部科学省は不登校の児童生徒に関する指導要録の取り扱いについて、新たな通知を発出しました。これまでも「不登校児童生徒への支援の在り方について」という通知(令和元年)の中で、学校外での学習活動を一定の条件のもとで出席扱いにできることが示されていました。今回の令和6年通知では、それに加えて、欠席期間中に自宅や学校外で行った学習の成果を、指導要録の成績評価に反映できることが法令上明確化されたという点が大きなポイントです。

「出席扱い」と「成績評価への反映」は、似ているようで別の話です。出席扱いはあくまで「休んだ日を欠席としてカウントしない」ための仕組みです。一方、成績評価への反映は、「その期間に取り組んだ学習の内容や成果を、通知表や指導要録の評定に織り込む」ことを意味します。この二つがセットで整備されたことで、不登校中に積み重ねてきた学習が、高校進学において正当に評価されやすくなりました。

令和6年度の文科省調査(令和8年1月公表)では、実際にこの制度を活用した児童生徒の数が初めて把握されています。制度が動き始めたばかりの段階ではありますが、「知らなかったから使えなかった」という状況を防ぐためにも、この制度をぜひ知っておいていただきたいと思います。

成績評価に反映されるための3つの要件

中学生が自宅のリビングで教材に向かって書き物をしており、横に学習記録ノートが置かれている

では、どのような条件を満たせば、自宅学習の成果が成績評価に反映されるのでしょうか。現行の制度では、大きく分けて次の3つの観点が求められています。

① 保護者または本人から学校への申請・相談があること

この制度は、自動的に適用されるものではありません。保護者または本人が、担任や学校側に「自宅学習の成果を評価に反映してほしい」と申し出ることが、制度利用の第一歩です。申し出のタイミングや方法に厳格なルールはありませんが、学期の途中や期末が近づいてからでは調整が難しくなることもあるため、できるだけ早めに学校と相談を始めることをおすすめします。

② 学習の内容・成果を学校が確認できること

学校側が成績に反映するためには、お子さんが何をどのように学んだかを確認する必要があります。具体的には、取り組んだ教材のリストや学習記録、提出物、テストの結果などが参考資料になります。フリースクールやICT教材を活用している場合は、その学習履歴や出席・学習の証明書が有効な資料となることがあります。「記録を残す習慣」が、後の評価相談をスムーズにする大切な準備になります。

③ 学校の教育課程に照らして学習内容が評価可能であること

自宅で取り組んだ学習が、学校の各教科の目標や内容と対応していることが確認できると、より評価に結びつきやすくなります。たとえば、国語・数学・英語などの教科書準拠の教材や、文部科学省が認定した学習支援ソフト・サービスを利用している場合は、学校との照合がしやすくなります。特定のアプリや通信教育を使っている場合は、その内容が学校のどの教科・単元に対応しているかを、担任の先生と一緒に確認してみるとよいでしょう。

成績評価反映のための準備チェックポイント
・学習の記録(日付・教材名・取り組んだ内容)をメモやノートに残しておく
・フリースクールや塾を利用している場合は、出席・学習証明の発行を確認する
・ICT教材は学習履歴がダウンロードできるか確認しておく
・担任の先生との定期連絡を活用し、相談のタイミングを逃さない

「内申点がつかない」という不安に、どう向き合うか

相談室で保護者と支援担当の教員が書類を前にして穏やかに話し合っている場面

「うちの子は学校に行けていないから、内申点がつかないかもしれない」——そうおっしゃる保護者の方に、まずお伝えしたいことがあります。内申点がつかない、あるいは低くなることへの心配は、とても現実的な不安です。同時に、制度を知り、学校に相談することで、状況は少しずつ変えられる可能性があります。

今回の令和6年通知の背景には、文部科学省が推進する「COCOLOプラン」があります。COCOLOプランは、すべての不登校の子どもたちが「学びたいと思ったときに学べる環境」を整えることを目指した総合的な支援計画です。その中で、自宅学習や学校外の学びを正当に評価することは、重要な柱のひとつとして位置づけられています。つまり、今回の制度変更は「特例的な措置」ではなく、国全体の方針として不登校の子どもたちの学びを支えようとする流れの一部です。お子さんの学びは、制度の後ろ盾を得て、確かに社会に認められようとしています。

学校への相談をためらわないために

「先生に相談しても、うまく伝わるか不安」という気持ちもあるかと思います。そのような場合は、まず教育委員会の相談窓口やスクールカウンセラーを通じて情報を整理してから、担任に相談する、という流れが取りやすいです。相談の場では、「令和6年8月の文科省通知を参考にしたい」と一言添えるだけで、学校側も対応しやすくなることがあります。

もし、在籍校との連絡がなかなかとりにくい状況であれば、フリースクールや民間の学習支援機関を介して学校と連携するケースも増えています。お子さんの状況に合わせて、無理のない相談の入り口を探してみるところから始めてみるのがおすすめです。

高校進学に向けて、いまできることを一歩ずつ

中学生が自宅の学習机でタブレットと教材を使って学習に取り組んでいる場面

成績評価の制度が整ったとはいえ、高校進学に向けた道のりはひとつではありません。全日制の高校を目指す場合、推薦入試や特別枠を活用する方法があります。一方で、通信制高校や定時制高校では、そもそも内申点の比重が低く、面接や作文、あるいは学力検査だけで選考するケースも多くあります。

クラーク国際中等部では、不登校の状態にあるお子さんが、自分のペースで学習を継続しながら高校進学の準備を進められる環境を整えています。中学の学習内容を丁寧にカバーしながら、クラーク記念国際高校などの通信制高校への接続も視野に入れたサポートを行っています。「このまま中学を卒業できるのか」「高校はどうすればいいのか」という不安を、一人で抱え込まないでほしいと思っています。

自宅学習の記録が「将来の自信」になる

学校に行けない日々の中でも、お子さんが学習に向き合っているなら、それは確かな力として積み重なっています。今日の小さな取り組みが、高校入学後の学力の土台になり、やがて自信につながっていきます。保護者の方が「この子はちゃんとやっている」と信じて寄り添い続けることが、お子さんにとって何よりの支えです。

制度を知り、記録を残し、学校と対話する——この三つのステップは、決して大きな負担ではありません。今日から少しずつ、できるところから始めてみてください。

まとめ|制度を知ることが、子どもの未来を守る第一歩

令和6年の文科省通知によって、不登校中の自宅学習が成績評価に反映されることが法令上明確になりました。これは、これまで「見えにくかった努力」を正当に評価してもらうための、大切な制度的後ろ盾です。

内申点への不安は、お子さんの将来を思うからこそ生まれるものです。でも、制度を知り、記録を残し、学校と相談することで、その不安を少しずつほぐすことができます。不登校は、お子さんの可能性を閉じるものではありません。今は休養と学びの準備期間として、お子さんのペースで歩んでいるだけです。その歩みを、制度がしっかり支えてくれる時代になっています。

高校という次のステージで、お子さんが自分らしく学び、夢に向かって挑戦できるように——その準備を、一緒に始めてみませんか。

不登校から高校進学準備ができるフリースクール

中村 成希

●一般社団法人こども教育支援機構 クラーク国際中等部 副校長
●一般社団法人IPUアカデミー IPUブリッジ 副校長
●学校法人創志学園 通信制高校運営管理本部 地区統括部 生徒サポートセンター センター長
●法務省 神戸保護観察所 中央区保護司会 保護司
●一般社団法人ひきこもり支援相談士認定協議会 元支部長

目次