「習慣でひらく扉――不登校の季節を歩く家族へ」3

7月が終わり、気づけばもう8月も半分を過ぎました。

夏休みに入り、「やっと学校のことを少し忘れられる」と肩の力が抜けたご家族もいれば、「9月が来るまでの時間が、かえって長く感じる」というご家族もいることと思います。どちらの気持ちも、当たり前です。

僕は、夏休みを「再起動のチャンス」だと考えています。

ただし、再起動といっても、決意を新たにすることでも、夏のうちに巻き返すことでもありません。むしろその逆で、「これでいいの?」と笑いたくなるくらい小さな1mmから、ゆっくり始めるための時間です。

今回は、夏休みも後半戦に入る今だからこそできる、家族の「1mmの再起動」のお話です。

目次

夏休みは「再起動」に向いている

学校がある日々は、起きる時間も、出る時間も、ご飯の時間も、ほとんど決まっています。決まっているからこそ、ペースが乱れると立て直しにくい。

逆に、夏休みは時間の柔軟性があります。朝6時に起きても、朝9時に起きても、誰にも怒られません。お昼ご飯を14時に食べても、誰も困りません。

これは、新しい習慣を「ちょっと試してみる」のに、とても向いている期間なのです。失敗してもダメージが少ない。やめても誰にも責められない。だからこそ、「うまくいくかどうかわからないけれど、ちょっとだけやってみよう」が、許される。

僕がこれまでに伴走してきた人たちで、習慣化に成功した方の多くが「夏休みに始めた」「お正月明けに始めた」と話します。日常がいったん緩むタイミングで、ほんの小さなことを試したら、それが秋の日常に持ち越されたのです。

「これでもかと小さく」が、いちばん効く

新しいことを始めるときに、いちばんよくある失敗は、「大きく始めすぎること」です。

たとえば「夏休みのあいだに、毎日30分は勉強しよう」と決める。最初の3日くらいはできるかもしれません。でも、4日目に1日休んだら、5日目には罪悪感が膨らんで、結局やめてしまう。

僕がおすすめしているのは、「これでもか」と笑ってしまうくらい小さく始めることです。

  • 「毎日30分勉強する」ではなく、「毎日、教科書を1ページだけ開く」
  • 「毎日早起きする」ではなく、「毎日、目が覚めたらカーテンを開ける」
  • 「毎日運動する」ではなく、「毎日、玄関を1回出入りする」

「こんなの意味あるの?」と思うかもしれません。意味はあります。なぜなら、習慣化でいちばん大切なのは、「続けたという事実を、自分の中に積み重ねること」だからです。

教科書を1ページ開くなら、調子が悪い日でもできます。気分が乗らない日でもできます。布団から出るのが億劫な日でも、できる。だから、続きます。

続くから、いつのまにか1ページが2ページになって、2ページが10分の読書になっていく。

これが、「ミニマムにする」という、習慣化の出発点です。

「今ある習慣」にひっそり乗せる

もうひとつ、夏休みに試してほしいコツがあります。それは、新しい1mmを「すでに毎日やっていること」にひっそり乗せる、というやり方です。

人間の一日には、すでにたくさんの自動化された行動が組み込まれています。歯みがき、着替え、朝食、トイレ、シャワー、寝る前のスマホ。これらは、もう脳が「いつも通り」として扱っている強い習慣です。

新しいことをゼロから組み立てるよりも、すでにある強い習慣に、ぴょこんと乗せてしまうほうが、ずっと続きやすい。

たとえば、こんな乗せ方ができます。

  • 歯みがきの後に、洗面台で1秒だけ自分の顔を見て笑う
  • 朝食の前に、コップ1杯の水を飲む
  • お風呂を出たら、明日の予定を頭の中で1行だけ確認する
  • 寝る前にスマホを充電する場所に、明日読みたい本を1冊置く

ポイントは、「〇〇したら、△△する」と、ペアにしておくこと。これは脳が条件反射で動きやすい形なので、意志の力がほとんどいりません。

今日からの1mm

9月も少しだけ見えてきた今、夏休みのあいだに、家族でひとつだけ「1mmの再起動」を決めてみませんか。

子どもにこっそり始めてもらうのも、親が先に始めて姿を見せるのも、両方OKです。

おすすめの1mmを、いくつか並べておきます。

  • 朝の1mm:起きたらカーテンを開けて、深呼吸を1回する
  • 食の1mm:朝ごはんのときに、1分だけ「今日いちばん楽しみなこと」を話す
  • 学びの1mm:好きな本を、布団の上で1ページだけ開く
  • 会話の1mm:寝る前に、家族のだれかに「ありがとう」をひと言だけ伝える

このうち、ひとつだけ。複数選ばないほうがうまくいきます。脳は「2つ以上のことを同時に新しく始める」のが、苦手だからです。

伴走者からの一言

夏休みの再起動は、9月のための準備ではありません。

「9月に間に合うように、夏のうちに何とかしなきゃ」と思った瞬間、その1mmは、家族の重荷に変わってしまいます。1mmは、9月のためではなく、今日のためのもの。今日、ほんの少しだけ気分よく寝るための、今日のごほうびです。

それを8月のあいだ、続けてみる。続けた1mmが、自然に9月に持ち越されていくなら、それは結果として、新しい「いつも通り」が育っているということ。けれど、続かなくても、それはそれで構いません。続かなかった1mmは、次のチャンスでまた試せばいいだけです。

夏休みのゆったりした期間を、家族の小さな実験室にしてみてください。

次回は、2学期が近づいてくる8月の最後の週に、親自身が「先に整える」ための習慣についてお話しします。

(つづく)

不登校から高校進学準備ができるフリースクール

寄稿者

二川 佳祐

2009年、東京学芸大学卒業(A類社会科専攻)。同年から2026年まで17年間、東京都公立小学校で教員として勤務(主任教諭)。教員をしながら、2017年12月、学びのコミュニティ「BeYond Labo」を立ち上げ、マイチャレンジサロンを継続して運営。Voicyにて毎朝配信を継続中。ICT・AI活用、習慣化に関する著書多数。2026年3月に退職し、同年5月、株式会社E³ Habit を設立。全国の先生を「縁」でつなぎ、学びを楽しむ大人を増やすことをライフワークとしている。Voicy「学び応援し続ける ふたかわさんの習慣伴走ラジオ」を毎朝配信中。

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