不登校離職|仕事を辞める前に知っておきたい制度と選択肢

お子さんが不登校になったとき、仕事を続けることへの罪悪感や、「もう辞めるしかないのかもしれない」という追い詰められた気持ちを抱えている保護者の方は、決して少なくありません。NPO法人キーデザインが2026年に実施した「不登校離職 実態調査」では、子どもの不登校をきっかけに退職や休職を余儀なくされる保護者の実態が大規模に数値化され、特に母親への対応負担の偏りが浮き彫りになりました。でも、「辞める・辞めない」の二択しかないわけではありません。この記事では、仕事を辞める前に一度立ち止まって知っておきたい制度と選択肢を、一緒に整理していきたいと思います。
文部科学省の令和6年度調査では、不登校の児童生徒数が過去最多水準を更新し続けていることが報告されています。つまり、同じ悩みを抱える保護者の方がそれだけ多くいるということでもあります。あなたが感じているつらさは、決して特別なことではありませんし、あなたのせいでもありません。まずそのことをお伝えしたいと思います。
「不登校離職」が起きやすい背景と、そのリスク

子どもが学校に行けなくなると、保護者が直面するのは「誰がそばにいるのか」という問題です。学校に行けない朝、ひとりで家に残すことへの不安。突然の体調不良、カウンセラーとの面談、学校との連絡調整——気づけば仕事を休む日数が積み重なり、職場での居場所が失われていくように感じる方も多いでしょう。
キーデザインの調査では、対応の主な担い手になるのは母親に偏りやすく、退職・休職に至る割合も母親のほうが高い傾向が明らかになりました。パートナーや職場の理解が十分に得られないまま、ひとりで抱え込んでしまうケースが多いことがわかります。
離職がもたらす経済的・心理的な影響
仕事を辞めることで、たしかに物理的にそばにいられる時間は増えます。ただ、経済的な不安が重なると、保護者自身の精神的な余裕も少しずつ削られていくことがあります。収入減による家計の変化は、子どもの将来の選択肢——高校進学や習い事、フリースクールの利用——にも影響を与えることがあります。離職を選ぶことが「悪い」ということでは決してありませんが、長期的な視点でシミュレーションしておくことが、後悔のない判断につながります。
また、仕事を辞めた後、お子さんが回復してきたとき、「自分のせいで親に仕事をやめさせた」という罪悪感を子ども自身が抱えてしまうケースもあります。子どもの回復を見守りながら、保護者の方自身の生活基盤を守ることも、長い目で見れば家族全体を支えることになります。
辞める前に確認したい「使える制度」

「仕事を続けながら子どもに寄り添う方法はないだろうか」と感じている方に、まず知っておいていただきたいのが、すでに存在する制度の活用可能性です。完全に離職する前に、これらの選択肢を一度確認してみるのがおすすめです。
介護休業制度の「子ども」への適用可能性
介護休業制度は、一般的に高齢の家族を介護するための制度として知られていますが、精神的な不調を抱えるお子さんのケアに活用できる可能性がある場合もあります。ただし、適用条件は企業や状況によって異なります。まず会社の就業規則や人事担当者に確認してみることが、大切な最初の一歩になります。「介護」という言葉に違和感を感じるかもしれませんが、制度の名称よりも「今の自分に使える仕組みがあるか」という視点で調べてみてください。
テレワーク・時短勤務の交渉ポイント
在宅勤務や時短勤務が可能な職場であれば、子どもがそばにいながら仕事を続けられる場合があります。交渉の際には、「なぜ必要か」「どのくらいの期間を想定しているか」「業務への影響をどう最小化するか」をあらかじめ自分なりに整理しておくと、上司に相談しやすくなります。すべてを一度に変えようとせず、まず週に数日の在宅勤務から試してみるという段階的なアプローチが、職場との信頼関係を保ちやすいでしょう。
職場への相談前に準備しておきたいこと
・現在の勤務状況(遅刻・早退・欠勤の状況)を簡単にまとめる
・希望する働き方(在宅・時短・フレックスなど)と期間の目安を考えておく
・業務への影響を最小化するための代替案をひとつ考えておく
・相談先は直属の上司か人事か、まず一人に絞る
休職制度を「回復の時間」として使う視点
完全に辞めることではなく、まず休職という形で一定期間お子さんに寄り添う時間を確保するという選択肢もあります。雇用が継続されている状態であれば、傷病手当金(保護者自身が体調を崩している場合)や、無給であっても社会保険の継続加入といったメリットがあります。休職はあくまで「一時的な立ち止まり」であり、復職という道が残っている点が、退職との大きな違いです。
家計シミュレーションを「見える化」することの大切さ

「もし仕事を辞めたら、生活はどうなるだろう」という漠然とした不安は、具体的な数字にしてみることで、少し落ち着いて考えられるようになることがあります。感情的になっているときほど、数字という「事実」が判断の助けになります。
離職後の収支を「最低ライン」で試算してみる
まず、現在の月々の支出(住居費・食費・通信費・教育費・保険料など)を書き出してみましょう。次に、離職した場合に入ってくるお金——雇用保険(失業給付)、パートナーの収入、貯蓄の取り崩し可能額——を並べてみます。「何ヶ月持つか」が見えるだけで、焦りの中に少し余白が生まれることがあります。ひとりで抱え込まず、ファイナンシャルプランナーや家計相談窓口を活用することもひとつの方法です。
子どもの回復にかかる期間を「未知数のまま」受け入れる準備
不登校の回復には、数週間のこともあれば、数年単位のこともあります。「いつ終わるかわからない」という不確実さが、保護者にとって最もつらいところかもしれません。だからこそ、「○ヶ月間は今の状況を続けて、その後改めて判断する」という期限つきの見直しポイントを設けておくと、決断に追い詰められる感覚が和らぐことがあります。家計の見通しも、その時点で改めて確認できるよう準備しておくのがおすすめです。
ひとりで抱え込まないための公的相談窓口

「誰かに相談したいけれど、どこに行けばいいかわからない」という方のために、利用しやすい公的な相談先をご紹介します。相談することは、弱さではありません。情報を集め、選択肢を広げるための、とても賢い行動です。
教育相談・子育て相談の窓口
各都道府県・市区町村の教育委員会には、不登校に関する相談窓口が設置されています。学校のスクールカウンセラーや、地域によっては「教育支援センター(適応指導教室)」も、保護者の相談を受け付けています。「子どもを連れていかなければならない」ということはなく、まず保護者だけで話を聞いてもらうことができます。
労働・家計に関する相談先
仕事や家計についての不安は、労働局の「総合労働相談コーナー」や、各地の「労働基準監督署」でも相談できます。また、社会福祉協議会や市区町村の福祉窓口では、生活費や家計に関する相談を無料で受け付けている場合も多く、「まだそこまでではない」と思わずに気軽に話を聞きに行ってみるのがおすすめです。一人で問題を整理しようとせず、専門家の力を借りることで、視野が広がることがあります。
保護者が使いやすい主な相談窓口
・各市区町村の教育相談センター・教育支援センター
・学校配置のスクールカウンセラー(保護者のみの相談も可)
・労働局「総合労働相談コーナー」(働き方・休職・退職に関する相談)
・社会福祉協議会(家計・生活相談)
・ファイナンシャルプランナー無料相談(各自治体・金融機関が実施)
まとめ|「辞める・辞めない」より「今できる一歩」を
子どものそばにいたい、でも仕事も手放したくない——その両方の気持ちがあること自体、とても自然なことです。「不登校離職」という言葉が存在するほど、同じ状況に悩む保護者の方は多くいます。あなたが感じている葛藤は、決して大げさではありません。
大切なのは、「辞めるか・辞めないか」という二択で追い詰められないことです。休職・時短・在宅勤務・相談機関の活用など、段階的な選択肢を一つひとつ確かめながら、今の自分と家族にとって最善の形を探していただけたらと思います。不登校は、お子さんにとっても保護者の方にとっても、いつか必ず「あのときがあったから今がある」と思える経験になる可能性を持っています。
お子さんが自分のペースで回復し、高校進学や新たな挑戦へと歩みを進められるよう、保護者の方自身もどうか無理せず、使える制度と周囲のサポートを活用しながら進んでいただければと思います。クラーク国際中等部では、不登校の状態にあるお子さんとその保護者の方が、安心して次のステップを考えられる環境づくりをご支援しています。
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